2013年09月20日

アニメーターの単価のこと

皆さんこんにちは。
私は商業アニメーション技術者協会の切込隊長こと、Gです。

ついついHOTになってしまいがちな、アニメーターの収入のこと。
ちょっとCOOLに考えてみませんか。

ときどき、自分に関係する事柄だということもあって、当たり前の考え方が出来なくなってしまっている方を見かけることがあります。
ちょっと、他人事として捉え直してみれば、おかしいことに気がつくかもしれません。

ちょっとCOOLにビジネスの視点で考えてみましょう。


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  [テーマ]アニメーターの作業単価って安いの?
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巷で話題になるテーマで一番多いのはこれではないでしょうか。

動画の単価、原画の単価、作画監督の単価などなど…
単価にまつわる質問や、不満はいたる所で目にします。

さて、まずは「単価とは何か」についてCOOLに分析してみましょう。

そんなことは分かっているからもっと核心を突いたことを話してくれって?
あせっちゃだめです。
簡単なことからちゃんとCOOLに考えないといけません。

単価とは皆さんご存知のとおり、作業(商品)一単位に対する価格のことです。
アンパンを10個、1000円で買ったら、1個あたり100円です。
つまり、これを単価といいます。

動画であれば1枚いくら。
原画なら1カットいくら。
作画監督なら1話数の作画監督料がいくら。
ということですね。

ひとつの仕事(商品制作)を完了するといくら対価がもらえるかということです。

さて、原画のお話で、1カットの単価が4000円で高いだの安いだのというHOTな話を良く耳にします。

「1カットの単価が2500円なんて安すぎる。最低でも4000円はないと受注する意味がない」という話を聞いたりもします。
「1カットの単価が4000円なんて安すぎる」「1カットの単価が4000円なんてすごく高いね」なんて話も耳にします。

一体どうしてこんな会話になるのでしょうか。

例え話をしましょう。

あるパン屋さんでアンパンが1個、100円で売っています。
隣のパン屋さんではアンパンが1個、50円で売っています。

どちらのアンパンがお買い得な安いパンでしょうか。

すぐに答えが出るようではHOTすぎるかもしれません。

COOLな応えは「わからない」です。

なぜかというと、100円の方は直径15センチのふっくらした焼きたてのおいしいパン。
50円の方は直径5センチのまずいパン。
もちろん、主観はあります。
でも「まずいパンであるほど価値があって、私はとてもうれしい」という個性的な人は、この先を読む必要はないですよ。

一般的にこの条件なら、100円のパンの方が「お買い得」です。
つまり「安い」買い物なわけですね。
当たり前のことしか言わなくてすみません。

では原画1カットの単価が4000円だった場合、単価は高いのでしょうか安いのでしょうか。
答えは簡単。
「わからない」です。

「それじゃあ、単価の話は意味がないのか?」というお話になりますが、そんなことはありません。
単価はもちろん大事です。
ただし「どういう条件で、どういった内容なのか」によります。

総合的に、最終的な月収や年収が高いのであれば、その単価は高いといえますし、その逆なら安いといえます。
極端に言えば、時給換算で高ければその単価は高いということです。

なんだ、そんな答えか……と感じた人も多いでしょう。
それもそのはず、これが”当たり前の答え”だからです。

年収を左右する要因は単価だけではないということです。

仮に原画1カットの単価が1000円でも、月産300カットで月収300000円です。
同じく原画1カットの単価が1000円でも、基本給200000円プラス出来高であれば月産100カットで月収300000円です。

「そんなにたくさんカットは処理できないよ」という考えの方もいるかとは思いますが、実際に月産300カットをこなす人は実在します。
特に1970年代などは一人で一話数を処理するアニメーターもいました。

「それは昔の話でしょ」という、声が聞こえてきそうです。
そうです。
昔の話です。
では、どうして昔は出来て今は出来ないのか。

それは作業内容の問題です。

1970年代のアニメーションと現代のアニメーションを比べてください。
明らかに作画コストが増大しています。
それに比べ、単価の上昇はそれとは比べ物にならないくらい低く、結果として、作業に対する単価の価値が下がっているということです。

つまり、単価は作業内容によって安くも見えるし、高くも見えるということです。

また、それ以外の要素もあります。
作品の制作状況が悪いと二通りの収入の形が発生します。

ひとつは、制作スケジュールがなさすぎて「やっつけ作業(必要最小限の仕事しかしないこと)で、とりあえず完成させる」場合。
この場合は実はとても儲かります。
ある単価の原画のカットを1日に10カットも20カットも処理できるからです。
もちろん、手抜きであったり、雑であったりしますが、O.Aに間に合わず、莫大な賠償金を支払うよりはましなので、制作会社が雑な原画の納品を了解するわけです。

もうひとつは、制作スケジュールがなさすぎて「ボトルネック(演出処理や作画監督修正作業)で作業が滞り、原画スタッフへレイアウト戻し(チェックバック)がこない。その上、作業を待たされた挙句に引き上げ(不当な契約解除)になり、その結果、原画スタッフはスケジュールの空白が出来る」場合。
この場合は生産能率が著しく低下するので儲かりません。
不当な契約解除の保障も一般的にはありません。

また、金銭的な問題以外にも単価に換算されるものがあります。
たとえばパチンコ作品は単価がいいですが、TV等でのO.Aがありません。
アダルト作品は単価がいいですが、精神的な苦痛を感じるスタッフも多いでしょう。

他にも、スタッフ同士の人間関係が良くなかったり、教育体制が整っていなかったり、スキルアップの機会を与えてもらえなかったりと、いろいろな要素があります。

単価は分かりやすいバロメーターなのでHOTに語りやすい材料であることは良く分かります。
しかし、「どういう条件で、どういった内容なのか」を無視して単価を語ることはお勧めできません。

もっというならば「単価が少しでも高ければよいという考え」がアニメ業界の環境を悪化させているといってもいいでしょう。

制作会社がアニメーターを使うときにとても便利なのは「使い捨て」です。
「コストのかかる育成はしたくない」
「そのアニメーターに適した仕事を用意するのは面倒」
「仕事が減ったら、首を切りたい」
他にもいろいろありますが、だから「ちょっと単価を高くして使い捨てにしたい」と考えています。(もちろん全ての制作会社がこうだとは言いません)

制作会社としてはメリットばかりです。
原画スタッフは単価が少しでも高いとうれしいです。
月収や年収が少なくなっても、ちゃんと自分をマネージメントしないので気づきません。

COOLに結論。
単価は時給ではありません。
そして、仕事は単価だけで評価できるものでもありません。
総合的に判断することが重要です。

「アニメーターの作業単価って安いの?」という考え自体がナンセンスっていうことなんですね。

当たり前過ぎてガッカリしましたか。
しかし、ちょっとCOOLにビジネスの視点で考えてみましょう。
答えは簡単です。
posted by 商アニの切込隊長 at 03:11| 日記