2013年12月01日

正社員と請負契約とでは、どっちのほうがいいの?

皆さんこんにちは。
私は商業アニメーション技術者協会の切込隊長こと、Gです。

ついついHOTになってしまいがちな、アニメーターの収入のこと。
ちょっとCOOLに考えてみませんか。

ときどき、自分に関係する事柄だということもあって、あたり前の考え方が出来なくなってしまっている方を見かけることがあります。
ちょっと、他人事として捉え直してみれば、おかしいことに気がつくかもしれません。

ちょっとCOOLにビジネスの視点で考えてみましょう。


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 [テーマ]正社員と請負契約とでは、どっちのほうがいいの?
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さっちゃんのじいじに「このテーマでよろしく。じゃ!」と注文されましたのでお話したいと思います。

アニメ業界で既にお仕事をされている方は、このような質問をしないでしょうから、質問者さんはまだ社会で働いたことがない方でしょう。
となると、質問者さんは「正社員のほうがいい」と考えてるのではないでしょうか。
正社員のほうがいいという理由は「親が正社員のほうがいいと言っていたから」とか「テレビで、正社員じゃないと生活が不安定になるって言ってたから」といったところでしょう。
HOTに考えればそれが普通の答えです。

でも、ちょっと待って。
もう少しCOOLに考えてみましょう。

早速結論から言います。
「仕事をする状況によって、請負契約のほうが良い場合と正社員のほうが良い場合がある」

答えになっていないでしょ……と感じた人も多いでしょう。
それもそのはず、以前にもお話したことがありますが、なにごとも取り巻く状況を考慮しないと良し悪しは判断できないのです。

アニメ業界で既にお仕事をされている方は、このテーマには興味がないでしょうから、これからアニメ業界を目指す人を想定してお話ししましょう。

学生の方々が就職活動をするとき、真っ先に考えるのは「どうすれば、得するかな」ということでしょう。
それは「就きたい職業に就けるかどうか」「待遇が良いかどうか」「将来的に展望があるかどうか」「仕事が楽か辛いか」などなどです。
よくよく考えると、かなり器の小さな悩みですが、隠さざる本音としては良く分かります。

さて、今回のテーマはこの中の「待遇が良いかどうか」ということになります。
正社員の方が待遇がよく、非正社員は待遇が悪い。
これは一般的な労働が時給換算できる仕事ではほとんどのケースでそういえるでしょう。

まわりくどい書き方をしなくてはいけない理由は、アニメ業界の仕事の中にはそういった労働を時給換算しにくい職種があるからなのです。
そのため、労働を時給換算しにくい職種の場合は、一般的な「正社員のほうが待遇がいい」という常識が当てはまりません。

では、どのような職種が一般的な常識に当てはまらないのでしょうか。
それは、個人の能力に著しく依存している職種です。
組織や機材の重要性が低く、個人の能力次第で成果に大きな差が出る仕事。
その際たる職種がアニメーターや演出家、声優です。

もちろん「そのほかの職種では個人の能力に依存せずに成果を出している」と言っている訳ではありません。
また、声優に関しては仕事の受注システムの都合上、多くの場合、ランクによってギャラが固定されていますので、時給換算の仕事といってもそれほど大きく間違ってはいません。

さて、個人の技量によって大きく成果が異なるアニメーターの場合、時給の正社員がいいか、歩合の請負契約がいいかということですが、結論から言うと「歩合のほうがアニメーターの業務には適している」と言えます。

なぜか。
それは時給の場合、ある一定の売り上げを上げないと解雇されるからです。
たとえば時給1000円の人がいるとします。
その場合、売り上げは1時間あたり10000円ほど稼がないと解雇されます。
もちろんケースによってはそれでも解雇されないことはありますが、程度の差であって、貰っている時給よりも遥かに多額の売り上げを上げなくてはならないことには違いはありません。

たとえばスーパー勤務の正社員の場合。
スーパーの設備代、仕入れ代、人件費、社会保険、福利厚生、フランチャイズ契約料などたくさんの経費がかかっており、その上でオーナーの利益を確保しなくてはいけません。
「時給が1000円なんだから、1000円の売り上げを上げればいい」ということにはならないのです。

さて、制作会社に雇用されているアニメーターの正社員の場合はどうかというと、時給1000円のアニメーターの場合も同様で、1時間あたり10000円の売り上げがないと雇用主に利益はありません。
よって時給1000円のアニメーターには時給が貰える代わりに、最低限の売り上げノルマが課せられるわけです。
その売り上げノルマをこなせる場合は時給は安定してもらえるし、福利厚生はあるし、社会保険も会社が半額を負担してくれます。
しかし、ノルマをこなせない者は解雇されます。

アニメのギャラが安いことは皆さんご存知だと思います。
この安いギャラで1時間あたり10000円の売り上げを上げることが、どれほど難しいことかは理解に難くないでしょう。
「10000円は言い過ぎだ」という声が聞こえてきそうです。
なるほど、では東京都の最低時給の869円(2013年11月現在)ではどうでしょうか。
1時間あたり8690円のノルマです。
もちろん、経営者によっては5000円の売り上げがあれば解雇しないという方もいるでしょう。
しかし許容できる売り上げ金額にも限界があります。
極端に売り上げが低くても大丈夫だということはありません。
アニメ業界人であればほとんどの人が理解できると思いますが、この金額を1時間で稼ぐことはほぼ不可能です。
ごく一握りの、圧倒的に売り上げを上げることのできる技量を持つ者だけが可能です。

では、時給ではなく請負契約の場合はどうでしょうか。
たとえば1時間あたりの収入が1000円の人で個人事業主として請負っている場合。
作業スペースの賃料、電気代、通信費、消耗品代などの経費がかかっており、利益に対して個人事業主としての所得税がかかります。
社会保険や福利厚生などは、所得税が差し引かれた後の所得から支払います。
さて、1時間あたりの収入が1000円の人はいくら稼げば良いでしょうか。
1時間あたり2000円も稼げば十分です。
「1時間で2000円も稼げないよ」という声が聞こえてきそうです。
そのとおり。
そこそこ腕の立つアニメーターでも1時間あたり2000円稼げる人は少ないです。
ところが、個人事業主には東京都が定める最低時給の適用がされません。
1時間あたりの売り上げが500円でもいいのです。
それならば、1時間あたり1000円稼げばいいのですから、不可能ではありません。

そろそろ、話が見えてきたでしょうか。
ベテランアニメーターでも1時間あたり1000円を稼ぐのがやっとという状態です。
新人アニメーターは1時間あたり1000円稼ぐことも出来ません。
正社員雇用されたとしても売り上げノルマを達成することがまったく出来ないということです。
となれば、ノルマをクリアできない新人アニメーターは全員解雇されます。
だから自己責任において、東京都の最低時給よりも安い金額しか稼ぐことが出来なくても解雇されない個人事業主として、請負契約でアニメの仕事を続けたほうが良いということになるのです。
もちろん、そんな収入では納得がいかないという人は、抜群の技量で稼げば良いと思います。
そんな収入では納得もできないし、そんな技量もないという人はアニメーターをあきらめるしかありません。

まとめます。
能力が高ければ正社員として雇用してもらえますが、個人事業主として請負契約にしたほうが儲かります。
能力が低ければ正社員として雇用されても解雇されます。
まず、それ以前に正社員として雇用してもらえません。

働き方を選ぶとき「待遇が良いかどうか」ということを最優先事項にしている時点で、アニメーターという仕事は向いていないのかもしれません。

「正社員になる」ということは、その会社やチームの責任ある一員として、会社やチームに貢献する強い意思を持っているという証です。
請負業務は所詮、その時々にお互いを利用しあう形です。
仕事の最優先事項はお金を稼ぐことですから、お互いの力を利用しあうことはごく自然なことです。

ちなみに、株式会社を設立するには25万円ほどあれば可能です。
自分が社長になって自分を正社員雇用することも可能です。
正社員になりたいのであれば、簡単に出来るので是非試してみてください。

今回はさっちゃんのじいじからお題を振られたので、ちょっと情報紹介という要素が強かったかもしれないですね。
しかし、ちょっとCOOLにビジネスの視点で考えてみましょう。
答えは簡単です。
posted by 商アニの切込隊長 at 20:44| 日記